用語集

連帯保証人

れんたいほしょうにん

連帯保証人とは、主たる債務者と連帯して債務を負う人のこと。賃貸借契約では家賃滞納や原状回復費未払いなどについて借主と同じように請求を受ける立場です。

連帯保証人とは

連帯保証人(れんたいほしょうにん)とは、借主などの主たる債務者と連帯して債務を負う人です。民法446条以下は保証契約の基本ルールを定め、連帯保証については民法454条などで普通の保証より重い責任が置かれています。

賃貸借契約では、借主が家賃を滞納した場合、退去時の原状回復費を支払わない場合、契約違反に基づく損害金が発生した場合などに、貸主が連帯保証人へ請求することがあります。退去費用では経年劣化や通常損耗まで借主負担にできるわけではありませんが、借主が負うべき債務が残れば保証の対象になり得ます。

2020年4月施行の改正民法では、個人が事業でない保証を引き受ける場合の保護が強化されました。賃貸借の個人根保証契約では、保証人が負担する上限額である「極度額」を書面などで明示しなければ、保証契約が無効になります。

賃貸借契約での扱い

民法446条は、保証人が主たる債務者の債務を履行する責任を負うことを定めています。普通の保証人には、借主へ先に請求するよう求める催告の抗弁権、借主に財産があるなら先に執行するよう求める検索の抗弁権があります。しかし連帯保証人には、民法454条によりこれらの抗弁が認められません。

実務上は、貸主から未払賃料、遅延損害金、借主負担の原状回復費、契約書で定めた違約金などをまとめて請求されることがあります。

改正民法で特に重要なのが、民法465条の2の極度額です。賃貸借契約の連帯保証は、将来発生する家賃や退去時費用まで含む継続的な保証になりやすいため、個人根保証契約に当たります。極度額がない、または書面・電磁的記録で合意されていない場合、個人保証は効力が問題になります。

連帯保証人が死亡した場合などには、民法465条の4の元本確定事由も確認します。貸主側は契約更新時の保証意思確認、借主側は家賃保証会社への切替え可否を確認します。

極度額の相場と決め方

極度額は、個人の連帯保証人が負担する上限額です。賃貸実務では家賃1〜2年分を目安にする例があります( https://biz.homes.jp/column/topics-00128 )。三井住友トラスト不動産も、最大金額や当初賃料の24か月分といった設定方法を紹介しています( https://smtrc.jp/toushi/landlord/column/2021_06.html )。

法律上「必ず家賃何か月分」と決まっているわけではありません。国土交通省の「極度額に関する参考資料」は、家賃債務保証業者の損害額調査、家賃滞納発生調査、裁判例上の連帯保証人負担額を整理しています( https://www.mlit.go.jp/common/001227824.pdf )。

同資料で賃料帯別に細かく示されているのは、家賃債務保証業者が回収できなかった損害額の調査です。裁判例そのものは91件を対象に、連帯保証人の負担総額が平均で月額家賃等の約13.2か月分、中央値12か月分、最大33か月分と整理されています。極度額を「家賃1〜2年分」と置く実務感覚は、この裁判例平均とは整合しますが、最大値を見ると2年分を超える事案もあります。

月額賃料帯損害額の中央値損害額の平均値大きい事例の額読み方
4万円未満19.0万円28.2万円346.0万円低賃料帯でも原状回復費などで数十万円になることがあります
4万〜8万円未満35.6万円50.0万円418.6万円単身向けで多い帯でも100万円超の例があります
8万〜12万円未満49.9万円71.2万円369.3万円ファミリー物件では退去・明渡し費用が膨らみます
12万〜16万円未満64.8万円97.3万円478.5万円家賃上昇に合わせて平均損害額も大きくなります
16万〜20万円未満85.8万円126.2万円606.8万円高額帯では極度額100万円だけでは不足する場面があります

出典はいずれも国土交通省「極度額に関する参考資料」です( https://www.mlit.go.jp/common/001227824.pdf )。この表は保証会社側の損害額調査であり、個人保証人への裁判上の請求額そのものではありません。それでも、極度額を決めるときに「家賃の12か月分なら必ず十分」とは言い切れないことを示す資料として使えます。

記載では、「賃料2年分」だけで終わらせず、「極度額は100万円まで」のように金額で特定します。契約書の頭書や保証人欄に具体額を入れておく方が安全です。保証人候補に説明するときは、家賃、共益費、更新料、退去時費用、明渡しまでの損害金が合算される可能性を伝えるのが実務です。

2020年4月施行前後の契約の扱い

改正民法の極度額ルールは、2020年4月1日以降に締結された個人根保証契約に適用されます。国土交通省「民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A」は、施行前の賃貸借契約と保証契約について、改正民法施行後に初めて合意更新されるまでは、極度額の定めがなくても有効と整理しています( https://www.mlit.go.jp/common/001316901.pdf )。

更新時は、賃貸借契約と保証契約を分けて見ます。賃貸借契約だけを合意更新しても、保証契約を新たに締結または合意更新していなければ、保証契約まで当然に新法へ切り替わるとは限りません。

法定更新は、借地借家法により契約が法律上更新される場面です。当事者が新しい保証契約を結ぶわけではないため、合意更新と同じ処理にはなりません。更新書類に保証人欄を設けるなら、極度額、保証範囲、更新後の責任期間を確認します。

個人根保証契約の情報提供義務(民法465条の10)

2020年4月施行の改正民法では、個人保証人を保護するため、事業性のある保証だけでなく根保証の場面でも説明義務が強化されました。民法465条の10は、主たる債務者が個人に保証を依頼するとき、財産や収支の状況、他の債務の有無・額・履行状況、主たる債務以外に担保がある場合はその内容を提供しなければならないと定めています。

賃貸借で見ると、借主が親や親族に連帯保証人を頼む場合、単に「名前を書いてほしい」と頼むだけでは足りません。自分の収入、雇用形態、家賃とのバランス、カードローンや奨学金など他の借入れ、過去の滞納や支払い遅れ、敷金や保証会社利用の有無を、保証人候補が判断できる程度に説明する必要があります。

この情報提供義務に違反し、保証人が重要な点を誤認して保証契約をした場合、民法465条の10第2項により保証契約を取り消せる余地があります。たとえば、借主が既に複数月の滞納歴を抱えているのに「支払いに問題はない」と説明し、保証人がその説明を信じて署名したような事案です。

ただし、取消しを主張するには、どの情報が提供されず、保証人が何を誤認し、それが保証契約をするかどうかの判断に影響したのかを整理する必要があります。保証人側は、依頼時のメール、LINE、申込書、収入資料、貸主・管理会社からの説明記録を保存します。借主側は、保証人候補に説明した内容をメモやメールで残す運用にしておくと、後日の争いを減らせます。

普通の保証人・家賃保証会社との違い

区分主な相手責任の重さ賃貸実務での確認点
普通の保証人個人催告・検索の抗弁権がある現在の賃貸では少なめ
連帯保証人親族などの個人借主に近い責任を負う極度額、責任範囲、更新時の扱い
家賃保証会社保証事業者契約プランに基づき保証保証料、求償、登録業者か
敷金貸主が預かる金銭債務担保の原資控除後の残額は返還対象

敷金は借主の債務を担保する預り金で、連帯保証人は人による保証です。どちらも貸主の未回収リスクを下げる仕組みですが、敷金で足りない債務が残ると連帯保証人へ請求されることがあります。借地借家法は契約終了や更新拒絶のルールを定めますが、保証債務の基本は民法で確認します。

具体例

連帯保証人への請求対象になりやすい例:

  • 借主が数か月分の家賃を滞納した
  • 共益費や更新料など契約上の支払いが残っている
  • 借主の過失で設備を壊し、合理的な修理費が発生した
  • 喫煙やペット飼育違反により借主負担の原状回復費が残った
  • 明渡し後も未払賃料や遅延損害金が残っている
  • 契約書に根拠のある違約金が未払いになっている

連帯保証人の責任としにくい例:

  • 極度額を超える請求
  • 個人根保証なのに極度額の合意がない契約
  • 日焼けや設備の古さなど経年劣化分の修繕費
  • 借主に説明されていない過大な特約費用
  • 元本確定後に新たに発生した債務
  • 内容証明で根拠を求めても内訳が示されない請求

請求を受けた場合は、契約書、保証契約書、極度額、請求明細、退去精算書を並べて確認します。

保証人が請求を受けた時の対処手順

連帯保証人に督促が届いたときは、感情的に支払うか拒むかを決めず、請求の種類と根拠を時系列で確認します。最初に見るのは通知の形式です。普通郵便の督促状、内容証明、支払督促、訴状では緊急度が違います。裁判所から届いた書類は放置すると不利益が大きいため、期限を確認してすぐ対応します。

  1. 通知・請求書を受領したら、差出人、到着日、回答期限、請求額、請求名目を控えます。内容証明なら通知内容を保管し、訴状や支払督促なら裁判所名と期日を確認します。
  2. 賃貸借契約書、保証契約書、更新合意書、極度額の記載、請求明細、退去精算書を並べます。保証した契約と請求対象の契約が同じか、更新後も保証が続く書き方かを見ます。
  3. 普通の保証人なら民法452条の催告の抗弁、民法453条の検索の抗弁を検討します。連帯保証人は民法454条により原則として使えませんが、契約書上の立場が本当に連帯保証か、保証人が複数いる場合の負担関係は確認します。
  4. 極度額を超える部分、元本確定後に発生した債務、通常損耗や経年劣化分の修繕費、根拠のない違約金が混ざっていないかを点検します。退去時費用は写真、見積書、国交省ガイドラインとの照合が必要になります。
  5. 金額が大きい、訴状が届いた、借主と連絡が取れない場合は早期に弁護士へ相談します。法テラス、弁護士会の法律相談、自治体の消費生活相談、賃貸トラブル相談窓口を使い、支払前に内訳と反論余地を整理するのが実務です。

支払う場合でも、「全額を認める」のか「争いを避けるため一部を支払う」のかで書面の残し方が変わります。分割払いをするなら、元金、遅延損害金、支払期限、今後の追加請求の有無を明確にします。

実務上のポイント

連帯保証人になる前に見るべきポイントは、極度額、保証の範囲、契約期間、更新時の再同意、借主の収入状況です。極度額は「家賃何か月分」ではなく金額で明確に書かれているかを確認します。

保証契約は、民法446条2項により書面でしなければ効力を生じず、同条3項で電磁的記録も認められています。紙の契約では保証人欄への署名押印が一般的です。電子契約サービスを使う場合も、本人の承諾、電子署名の記録、PDFの保存方法を確認します。

借主側は、連帯保証人に頼む前に保証会社利用の条件を比較します。初期費用では仲介手数料や礼金、保証料が並ぶため、誰に支払う費用かを分けて整理します。

貸主側は、古い契約書を使い続けていないかを点検します。2020年4月以降の新規契約で個人の連帯保証を取るなら、極度額の記載漏れは大きなリスクです。更新時にも、保証人の意思確認、死亡・破産などの元本確定事由、連絡先の有効性を確認しておくと、後日の回収トラブルを減らせます。

連帯保証人を依頼する前のチェック項目:

  • 依頼先が契約内容と極度額を理解している
  • 年齢、収入、勤務状況、持ち家の有無を無理のない範囲で確認している
  • 既に他の賃貸やローンの保証人になっていないか聞いている
  • 借主本人の収入、勤務先、緊急時の連絡方法を説明できる
  • 保証会社併用や緊急連絡先のみで足りる物件も比較している

関連法令・出典

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