用語集

借地借家法

しゃくちしゃっかほう

借地借家法とは、建物所有目的の土地賃貸借と建物賃貸借を規律する民法の特別法。借主保護、更新拒絶の正当事由、定期借家契約などを定める法律です。

借地借家法とは

借地借家法(しゃくちしゃっかほう)とは、建物所有を目的とする土地の賃貸借と、建物の賃貸借を規律する民事特別法です。正式には平成3年法律第90号で、e-Gov 法令IDは 403AC0000000090 です。旧借地法・旧借家法・建物保護法を整理して一本化し、1992年8月に施行されました。

民法にも賃貸借の一般ルールがありますが、住まいや事業の基盤となる不動産賃貸借では、貸主と借主の交渉力に差が出やすく、契約終了が生活や営業に大きく影響します。そのため借地借家法は、更新拒絶や解約申入れに「正当事由」を求めるなど、借主保護を強めた特別ルールを置いています。

退去時の原状回復は主に民法621条と国土交通省ガイドラインで整理されますが、契約がいつ、どのように終了するかは借地借家法の問題です。経年劣化の負担区分を考える前提として、契約終了の根拠も確認しておく必要があります。

賃貸借契約での扱い

借地借家法は、民法の賃貸借規定に優先して適用される場面があります。特に建物賃貸借では、普通借家契約と定期借家契約の違いが重要です。

普通借家契約では、期間満了時に貸主が更新を拒絶したり、期間の定めのない契約を解約したりするには、借地借家法28条の「正当の事由」が必要です。正当事由は、貸主と借主が建物を必要とする事情、従前の経過、建物の利用状況、立退料などの財産上の給付を総合して判断されます。老朽化や売却予定だけで当然に退去を求められるわけではありません。

一方、定期借家契約は借地借家法38条に基づく契約で、契約期間の満了により更新なく終了する仕組みです。ただし、契約前に書面または電磁的方法で「更新がなく期間満了で終了する」ことを説明する必要があります。説明が不十分な場合、定期借家としての効力が争われることがあります。

また、借地借家法32条は借賃増減請求権を定めています。税負担、土地建物価格、近隣賃料などの変動により賃料が不相当になった場合、貸主・借主の双方が増額または減額を請求できます。33条の造作買取請求権は、借主が貸主の同意を得て取り付けた造作について、契約終了時に買取りを請求できる制度です。ただし、特約で排除される場合もあるため契約書確認が必要です。

退去時の修繕義務は、借地借家法だけで完結しません。民法621条は通常損耗や経年変化を原状回復義務から除外しており、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も同じ方向で負担区分を整理しています。

民法・定期借家との違い

区分主な内容賃貸実務での確認点
民法賃貸借、敷金、原状回復などの一般ルール621条、622条の2、債務不履行の有無
借地借家法借地・借家に関する民法の特別法更新拒絶、解約申入れ、定期借家、賃料増減
普通借家契約更新を前提とする通常の建物賃貸借貸主側の終了には正当事由が必要
定期借家契約更新がなく期間満了で終了する契約事前説明書面、終了通知、再契約条件

借地借家法は「家賃を払っている借主を守る法律」というだけではありません。貸主が正当に建物を回収したい場面、賃料を見直したい場面、定期借家で期間を明確にしたい場面でも基準になります。

具体例

借地借家法が問題になりやすい例:

  • 貸主から「建て替えるので次回更新はしない」と通知された
  • 普通借家契約で、期間満了後の更新を拒絶された
  • 定期借家契約として契約したが、事前説明の記録が見当たらない
  • 近隣相場の変化を理由に賃料増額を求められた
  • 借主が設置したエアコンや棚の造作買取を求めたい
  • 立ち退き料の提示額と退去条件を検討している

借地借家法だけでは判断できない例:

  • クロスの日焼けや床の色あせを誰が負担するか
  • 敷金から差し引ける原状回復費の範囲
  • 借主の過失による設備破損の補修費
  • ハウスクリーニング特約の有効性
  • 仲介手数料の上限

これらは民法、消費者契約法、宅建業法、国土交通省ガイドラインなどを組み合わせて確認します。

実務上のポイント

借地借家法でトラブルを避けるには、契約類型の確認が出発点です。普通借家なのか定期借家なのか、契約書だけでなく、契約前説明書面や更新時の書類も確認してください。定期借家契約では、期間満了前の通知時期、再契約の有無、再契約料の扱いが実務上の争点になります。

貸主から更新拒絶や解約申入れを受けた場合は、通知日、退去希望日、理由、立退料の有無、建物の老朽化資料を整理します。正当事由は一つの事情だけで決まらず、双方の必要性と代替手段を見ます。借主側も感情的に拒むのではなく、転居費、次の住居の初期費用、営業補償など、交渉材料を具体化することが重要です。

退去精算では、契約終了の根拠と原状回復の根拠を分けます。借地借家法上は退去することになっても、通常損耗や経年劣化まで借主負担になるわけではありません。見積書に通常損耗が含まれていないか、国交省ガイドラインと照合して確認します。

定期借家契約の手続き要件

定期借家契約は、契約書に「定期借家」と書けば成立する制度ではありません。借地借家法38条は、契約を公正証書等の書面または電磁的記録で行うことを求めています。さらに貸主は、契約締結前に、期間満了で終了し更新がない旨を、契約書とは別に書面等で説明しなければなりません。国土交通省の資料も、契約書とは別の書面交付と説明が必要だと案内しています( https://www.mlit.go.jp/common/001170116.pdf )。

この説明を欠くと、更新がない旨の定めを借主に主張できず、普通借家に近い扱いで争われるおそれがあります。契約期間が1年以上の定期借家では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までに終了通知を出す必要もあります。再契約を予定している物件でも、終了通知と再契約条件は分けて管理します。

普通借家契約の更新拒絶要件

普通借家契約では、貸主が「次回更新しない」と通知するだけでは足りません。期間の定めがある建物賃貸借では、期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶通知を出し、借地借家法28条の正当事由も必要です。

正当事由は、貸主・借主双方の使用必要性、従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料などを総合して判断します。立退料は単独で正当事由を作るものではなく、不足する事情を補う要素です。老朽化、相続、売却予定があっても、建物資料、代替住居、補償条件をそろえなければ交渉は長期化しやすくなります。

賃料増減請求権の差異

借地借家法32条は、土地建物価格、税負担、近隣賃料、経済事情の変動により賃料が不相当になった場合、貸主・借主の双方が増額または減額を請求できると定めています。普通借家では、一定期間の増額をしない特約は有効ですが、減額請求権まで一律に排除することはできません。

定期借家では扱いが異なります。借地借家法38条7項により、賃料改定に関する特約を置いた場合は、32条の借賃増減請求権を排除できます。東建コーポレーションも、定期借家では特約で排除できると整理しています( https://www.token.co.jp/estate/apartment-management-encyclopedia/legal-affairs/04-06/ )。長期の定期借家では、改定条項の有無が収支に直結します。

造作買取請求権

借地借家法33条は、借主が貸主の同意を得て付加した造作について、契約終了時に貸主へ買取りを請求できる制度を定めています。典型例は空調、棚、造作設備などです。ただし、この権利は特約で排除できます。撤去または無償残置とする特約も多いため、工事前の同意書と契約書の両方を確認します。

関連法令・出典

関連用語

さらに詳しく

退去費用の見積もりに納得いかない方へ

国交省ガイドラインに沿った妥当性を、当社が無料で診断します。請求内訳を写真かPDFでお送りください。

退去費用を無料で相談

ガイドライン解説を読む →