退去立会いとは -- 当日の流れ・所要時間・確認すべきポイントを徹底解説【2026年版】

監修

賃貸リフォーム研究所 編集部

原状回復・退去費用の専門メディア

賃貸物件の原状回復・退去費用トラブルに関する正確な情報発信を行う編集チーム。国土交通省ガイドラインや民法の規定に基づき、退去者・管理会社双方の視点から解説記事を制作。

賃貸物件を退去するとき、引き渡し前の最後の関門が「退去立会い」です。管理会社や大家さんと一緒に部屋の状態を確認し、原状回復費用の見積もり方針が決まる重要な場面ですが、「何を準備すればいいのか」「どこを見られるのか」「どのくらい時間がかかるのか」が分からず不安になる方は少なくありません。

退去立会いでの対応次第で、敷金返還額や退去費用が10万円以上変わることもあります。立会いの目的、流れ、所要時間、確認ポイント、トラブル予防策を事前に押さえておけば、不当な請求を回避し、納得のいく精算につなげられます。

この記事では、退去立会いの基本から実務上の注意点まで、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と民法に基づいて解説します。

退去立会いとは

退去立会いは、賃貸物件の解約に伴う部屋の状態確認手続きです。借主が退去する際、管理会社の担当者または大家さんと一緒に物件を回り、損耗箇所をその場で確認し、原状回復が必要な範囲を双方で合意するために行います。

立会いの目的は3つあります。第一に、入居中に生じた損耗を貸主側が把握すること。第二に、損耗が「通常損耗・経年劣化(貸主負担)」なのか「故意・過失(借主負担)」なのかを現場で判定する材料にすること。第三に、敷金精算の根拠資料(写真・記録)を作成することです。

法律上、退去立会いは賃貸借契約上の義務ではありません。民法やガイドラインに「立会いをしなければならない」と定めた条文はなく、実務慣行として定着しているにすぎません。ただし、立会いを行わないと「入居前からあった傷」と「借主が付けた傷」の判別が困難になり、結果的に借主が不利になりやすい構造があります。

立会いと混同されやすいのが「鍵の引き渡し」です。鍵の返却そのものは契約終了の手続きであり、立会いと別に行われることもあります。立会い当日に鍵まで返却するか、後日返却するかは管理会社のフローによって異なります。

退去立会いの流れと所要時間

立会い当日の標準的な進行を時系列で確認します。

当日の流れ

立会いは予約制で、退去日の前日〜当日に実施されることが一般的です。所要時間は30分〜1時間半が目安です。物件の広さ、損耗の多さ、立会い担当者の経験により幅があります。

ステップ内容所要時間
1. 事前準備借主が荷物を全て搬出、清掃完了立会い前
2. 鍵預かりと顔合わせ担当者と挨拶、契約内容の簡単な確認5分
3. 部屋の状態確認各部屋を回り、損耗箇所を写真記録20分〜60分
4. 設備動作確認エアコン・給湯器・換気扇・コンロの動作確認5分〜10分
5. 確認内容の整理損耗箇所一覧の作成、原状回復範囲の説明10分〜15分
6. サイン・捺印立会い確認書、引渡し確認書5分

物件規模別の所要時間目安

間取り所要時間目安
ワンルーム・1K30分〜45分
1LDK・2DK45分〜1時間
2LDK・3DK1時間〜1時間半
3LDK〜1時間半〜2時間

時間がかかるケースは、損耗箇所が多い場合、立会い時に契約内容や費用について議論が発生した場合、立会い担当者が現状回復見積もりの金額を提示してその場で説明する場合です。

退去立会いに必要なもの

立会い当日に持参すべきものを整理します。事前準備が立会いの効率と精度を左右します。

必須の持参物

  • 賃貸借契約書(特約条項を確認できるようにする)
  • 鍵(部屋の鍵、メールボックスの鍵、駐輪場・駐車場の鍵すべて)
  • 印鑑(認印で可。立会い確認書のサインに使用)
  • 入居時に撮影した部屋の状態写真(既存の傷・汚れの証拠)
  • スマートフォンまたはカメラ(立会い時に新たに記録するため)

あると役立つもの

  • 退去日と引っ越し当日の連絡先メモ(搬出業者の電話番号など)
  • 入居時のチェックリストや現況確認書(あれば)
  • ハウスクリーニング費用の特約に関する記録
  • 過去の修繕履歴・連絡履歴(メールや書面)
  • 筆記用具(指摘事項のメモ用)

入居時の写真や現況確認書がない場合でも、立会い時に部屋の状態を細かく自撮りしておけば、後の精算交渉で根拠資料になります。

立会いで確認すべきポイント

立会い時に借主が能動的にチェックすべき箇所を整理します。担当者任せにせず、自分の目で確認することが重要です。

部位別の確認項目

壁・天井(クロス)でチェックする項目は、タバコのヤニ汚れと臭い、下地ボードまで貫通した大きな穴、ペットによる引っかき傷、結露によるカビ・シミ、画鋲・ピン穴の数と程度です。

床(フローリング・CF・畳)では、大きな傷やへこみ、飲み物・水こぼしのシミ、家具による日焼け跡、ペットの爪痕・尿シミを確認します。

水回り(キッチン・浴室・トイレ・洗面台)は、油汚れ・水垢・カビの程度、蛇口や換気扇や給湯器の動作、シリコンコーキングの状態、排水口の詰まりを見ます。

設備(エアコン・給湯器・コンロ)の動作確認、フィルターや内部の汚れ、故障や異音の有無も担当者が確認します。

建具(ドア・襖・障子・窓)は、開閉の動作、鍵の動作、ガラスのひびや割れの有無をチェックします。

ガイドライン視点でのチェック

国交省ガイドラインでは、損耗の判定基準として「通常使用 / 通常使用を超える使用」「善管注意義務(民法400条)の履行」を重視しています。立会い時に担当者が指摘した損耗が、ガイドラインの「貸主負担」に該当する項目(日焼け、画鋲穴、家具のへこみなど)なら、その場で疑問を伝えてください。

詳しい判定基準は原状回復はどこまで借主負担?退去費用 払わなくていいもので整理しています。

立会い時のサインの注意点

立会い終了時に求められるサインは、後の交渉で「内容に同意した」と解釈される可能性のある重要書類です。安易にサインしてはいけません。

サインを求められる書類

  • 立会い確認書(指摘された損耗の一覧)
  • 引渡し確認書(鍵の返却・退去日の確認)
  • 原状回復費用見積書(金額が確定している場合)

サイン前に確認すべきこと

  1. 損耗箇所の記載が事実と一致しているか
  2. 「借主負担」と書かれた項目に通常損耗・経年劣化が含まれていないか
  3. 金額が記載されている場合、その根拠が示されているか
  4. 後日金額が変動する可能性についての記載があるか

その場で判断できない場合は「内容を持ち帰って確認のうえ、後日返答します」と伝えてサインを保留できます。サインの拒否は法的に認められた借主の権利です。詳しくは賃貸退去立会いサイン拒否の対処法を参照してください。

危険なサインのパターン

  • 「金額未定のまま全面的に費用を認める」と読める文書
  • 「異議を申し立てない」と書かれた包括的な合意書
  • 損耗箇所が具体的に列挙されていない「一式」表記の確認書

これらにサインすると、後日請求された金額に対する交渉が困難になります。サインの前に必ず内訳と根拠を確認してください。

立会い不要となる3パターンと注意点

退去立会いは多くの物件で実施されますが、すべての契約で必ず対面確認が必要になるわけではありません。立会い不要となる代表的なパターンは3つあります。

1つ目は、管理会社の運用として立会い不要にしているケースです。郵送で鍵を返却し、退去後に管理会社や委託業者が室内を確認する方式、オンラインフォームで退去報告を完結させる方式、写真提出を前提にする方式などがあります。遠方転居や多忙な借主には便利ですが、室内確認を貸主側だけで行うため、記録を残さないまま退去すると後日の反論が難しくなります。

2つ目は、契約書や退去届に「立会い不要」「貸主または管理会社による確認をもって精算する」といった条項がある場合です。この場合でも、借主が原状回復費用の内容に何も言えなくなるわけではありません。後日届く精算書について、損耗箇所、修繕範囲、単価、通常損耗・経年劣化の扱いを確認できます。

3つ目は、借主と管理会社が個別に合意して立会いを省略するケースです。仕事、育児、遠方転居、体調不良などで日程が合わない場合は、電話だけで済ませず、メールで「立会いを省略すること」「鍵返却日」「室内確認日」「精算書の送付方法」を残しておきます。

立会いなしにするなら、退去前の対策が重要です。必ず、部屋全体と損耗箇所を日付が分かる形で写真・動画撮影し、入居時の記録と照合し、気になる傷や設備不良を管理会社へ事前報告し、鍵の返却方法を明確にし、原状回復費用の見積もりが届いたら明細を確認してください。特に水回り、床、クロス、建具、エアコン内部は、清掃不備や破損の指摘を受けやすい部分です。

立会いなしのリスクは、後日になって身に覚えのない傷を請求されること、清掃不備として追加費用を求められること、残置物や粗大ごみの処分費を請求されることです。立会いをしない選択自体は可能でも、証拠を残さない退去は避けてください。

代理人立会い・法人契約の特殊例

借主本人が退去立会いに出られない場合は、代理人を立てられることがあります。家族、同居人、友人に依頼する例が多いですが、原状回復費用が高額になりそうな場合や既にトラブル化している場合は、弁護士や司法書士に相談することもあります。代理人を認めるか、どの範囲まで判断できるかは管理会社の運用によるため、事前確認が必要です。

手続きとしては、委任状、借主本人の本人確認書類の写し、代理人の本人確認書類を求められることがあります。委任状には、物件名、退去日、代理人氏名、立会いと鍵返却を委任すること、費用負担について即時承諾する権限の有無を書き分けます。代理人に「その場で金額に同意しない」「不明点は持ち帰る」と伝えておくことも大切です。

法人契約では、入居者本人ではなく総務部門や契約担当者が窓口になることがあります。担当者交代があると、入居時の写真や修繕履歴が引き継がれていないこともあるため、退去前に社内で契約書、入居時チェックシート、鍵の本数、備品リストを確認してください。

高齢者、海外赴任、入院、長期出張などの事情がある場合も、早めに管理会社へ相談すれば、代理人立会い、郵送での鍵返却、オンライン確認などに切り替えられる場合があります。重要なのは、誰が、いつ、何を確認し、どの書類に署名できるのかを曖昧にしないことです。

退去立会いを断る・なし にする選択肢

退去立会いは法律上の義務ではないため、借主側から「立会いなし」を選ぶことも可能です。ただしリスクとメリットを理解したうえで判断してください。

立会いをしないケース

  • 引っ越し先が遠方で立会いに行けない
  • 仕事や育児で時間が確保できない
  • 立会い担当者と対面することが精神的に負担
  • 物件の状態に不安があり、その場での議論を避けたい

立会いなしのリスク

立会いをしない場合、貸主側の判定だけで原状回復範囲が決まります。借主が不利な判定になるリスクを整理します。

  • 入居前からあった傷を「借主が付けた」と主張される
  • 通常損耗が借主負担に計上される
  • 損耗範囲が過大に拡張される
  • 経年劣化控除が反映されない

立会いなしを選ぶ場合の対策

立会いなしを選ぶ場合は、以下の準備が重要です。

  • 退去前に部屋全体の写真・動画を日付入りで撮影
  • 入居時の写真と比較できる形で記録
  • 鍵の返却方法(郵送・宅配ボックスなど)を書面で確認
  • 精算書が届いたら、内訳明細を細かく検証

詳しい判断基準は退去立会いしないほうがいい?メリット・デメリットの整理を参照してください。

立会いトラブルへの対処法

立会いの場で疑問が生じた場合の対処法をまとめます。

担当者の指摘に納得できない場合

担当者の判定に疑問を感じたら、その場で質問してください。「これは通常損耗ではないでしょうか」「ガイドラインでは貸主負担とされているはずですが」と具体的に伝えれば、担当者も再検討するはずです。

回答が曖昧な場合は「持ち帰って確認します」と伝え、サインを保留してください。立会い後に管理会社の上席や本社に問い合わせることもできます。

高額な見積もりを提示された場合

立会い時にその場で高額な見積もりを提示されることもあります。「この場で決められない」と伝え、書面の見積書を後日送付してもらうのが原則です。見積書を受け取ってから、内訳を検証して交渉に入ります。

詳しい交渉の進め方は退去費用に納得いかないときの対処法退去費用 交渉ガイドを参照してください。

担当者と感情的な対立が生じた場合

立会いでは現場の担当者と借主が一対一になりやすく、感情的な対立が生じることもあります。対立が深刻化する前に、第三者(管理会社の本社、消費生活センター188)への相談を視野に入れてください。

その場で揉めるよりも、書面でのやりとりに切り替えた方が冷静な議論ができます。

立会い後の流れ

立会いが終わってから精算書の到着・敷金返還までの流れを押さえます。

時期内容
立会い当日〜翌日担当者が見積もりを業者に依頼
立会い後7〜14日原状回復見積書・敷金精算書が借主に届く
精算書到着〜30日借主が内訳を検証、必要なら交渉
退去日から1〜2ヶ月敷金返還(または不足分請求)

精算書が届いてから1ヶ月程度は、内訳の検証と交渉に使える期間です。届いた書類はすぐサインせず、ガイドラインと照らし合わせて確認してください。

退去手続き全体の流れは賃貸の退去の流れ、敷金返還のタイミングは敷金は返ってくる?返還額の計算方法で詳しく整理しています。

関連記事

出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(2011年8月)、民法621条(賃借人の原状回復義務)、民法622条の2(敷金)、民法400条(善管注意義務)、消費者契約法10条


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立会い当日の不安や精算書の内容について個別に相談したい方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。

出典・参考文献

よくある質問

退去立会いとは何をする手続きですか?
退去立会いは、賃貸物件の解約に伴う部屋の状態確認手続きです。管理会社の担当者または大家さんと一緒に物件を回り、損耗箇所を確認し、原状回復が必要な範囲を判断する材料にします。目的は損耗の把握、通常損耗か借主負担かの判定資料づくり、敷金精算の根拠記録を残すことです。法律上の義務ではなく実務慣行で、鍵の引き渡しとは別の場合もあります。
退去立会いの流れはどう進みますか?
立会いは予約制で、退去日の前日から当日に行われることが一般的です。荷物の搬出と清掃を終えたうえで、担当者との顔合わせ、鍵や契約内容の確認、部屋の状態確認、設備動作確認、損耗箇所の整理、書類確認、鍵返却へ進みます。所要時間は30分〜1時間半が目安です。損耗が多い場合はさらに延びるため、書類を読む時間も残します。
退去立会いに必要なものは何ですか?
賃貸借契約書、部屋やメールボックスなどの鍵一式、印鑑、入居時に撮影した写真、スマートフォンまたはカメラを用意します。あると役立つものは、入居時チェックリスト、現況確認書、ハウスクリーニング特約の記録、修繕履歴や管理会社とのメール、指摘事項を書き残す筆記用具です。写真がない場合も当日に細かく撮影します。
退去立会いで気をつけるポイントは?
担当者任せにせず、壁、床、水回り、設備、建具を自分でも確認します。指摘された損耗が通常損耗や経年劣化にあたる可能性がある場合は、その場で疑問を伝えます。サイン前には、損耗箇所が事実と一致しているか、借主負担項目に通常損耗が含まれていないか、金額根拠があるかを読みます。判断できなければ保留し、通常損耗なら質問します。
立会い後のトラブルを避けるには?
立会い時は指摘箇所と部屋全体を写真で残し、担当者名や説明内容をメモします。金額未定のまま全面的に費用を認める文書や、異議を申し立てないと読める合意書には注意が必要です。判断できない場合は内容を持ち帰って確認すると伝え、後日届く見積書や精算書をガイドラインと照らして検証します。書類はすぐ捨てず保管します。

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