用語集

礼金

れいきん

礼金とは、賃貸借契約の締結時に借主から貸主へ支払う、原則として返還されない金銭。敷金とは異なり、未払賃料や原状回復費の担保ではありません。

礼金とは

礼金(れいきん)とは、賃貸借契約の締結時に、借主から貸主へ支払う返還義務のない金銭です。敷金のように未払賃料や原状回復費を担保する預り金ではなく、契約成立時の謝礼や一時金として扱われる商慣習です。

民法には礼金を直接定義する条文はありません。礼金は賃貸借の基本構造に追加される契約上の費目のため、金額、返還の有無、支払時期は契約書と重要事項説明書で確認します。

敷金は未払債務などを控除した残額が返還対象になりますが、礼金は原則として返還されません。経年劣化や通常損耗の修繕費を請求された場合でも、礼金を当然に充当できるわけではありません。

賃貸借契約での扱い

礼金は法律上の明文定義がないため、契約自由の原則のもとで、当事者が合意した初期費用として扱われます。ただし、居住用賃貸借で借主が消費者に当たる場合、条項の内容が一方的に借主の利益を害するなら、消費者契約法10条との関係が問題になります。

最高裁平成23年7月15日判決は更新料特約について、契約書に一義的かつ具体的に記載され、金額が高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条により無効とはいえないと判断しました。礼金そのものの判決ではありませんが、一時金では金額の明確性、説明、地域慣行、賃料との関係が重要です。

敷引特約についての最高裁平成23年3月24日判決・同年7月12日判決でも、通常損耗や経年変化の補修費、賃料、礼金など他の一時金を踏まえて判断されています。礼金と高額な敷引きが併存する場合は、全体を見ます。

礼金は宅地建物取引業法35条の重要事項説明でも、契約条件として確認すべき費目です。初期費用明細では仲介手数料や保証会社利用料と並びますが、支払先と性質が異なります。

敷金・保証金・仲介手数料との違い

費目支払先法的・実務上の性質返還の扱い
礼金貸主契約時の謝礼的な一時金原則返還なし
敷金貸主借主債務の担保控除後の残額を返還
保証金貸主敷金類似または事業用担保敷引き・償却条項による
仲介手数料仲介会社契約成立の媒介報酬原則返還なし
更新料貸主更新時の一時金原則返還なし

礼金が「家賃1か月分」と表示されていても、敷金1か月分とは意味が異なります。礼金ゼロ物件でも、保証料やクリーニング特約が重い場合があります。初期費用は合計額だけでなく、戻る可能性がある費目と戻らない費目を分けて見ます。

礼金の歴史的経緯

礼金は、住宅が不足していた時代に、住まいを貸してもらうことへの謝礼として広がった慣習と説明されることが多い費目です。法律で全国一律に定められた制度ではありません。関東圏では「礼金1か月」の表示をよく見ますが、関西圏では保証金・敷引きの形で一時金を設定する例が目立ちます。

UR賃貸住宅のように礼金、仲介手数料、更新料、保証人を不要とする募集もあり、初期費用を抑える選択肢が増えています( https://www.ur-net.go.jp/chintai/college/202111/000776.html )。一方、人気エリアや新築物件では今も礼金が設定されることがあります。

礼金の地域別相場

礼金は全国一律の制度ではなく、地域の募集慣行に強く左右されます。国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査」は、民間賃貸住宅について三大都市圏を対象に調査しており、令和6年度の礼金あり世帯は三大都市圏全体で42.6%、首都圏で49.0%、近畿圏で41.9%、中京圏で20.0%と整理できます( https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-other-2_tk_000219.html )。礼金の月数は、三大都市圏全体で1か月ちょうどが最多です。

LIFULL HOME’Sの解説でも、敷金・礼金は家賃1〜2か月分が目安で、関西では保証金・敷引きという慣行があると説明されています( https://www.homes.co.jp/cont/rent/rent_00291/ )。つまり、同じ「礼金ゼロ」でも、首都圏での礼金ゼロ、関西圏での保証金・敷引きあり、地方都市でのゼロゼロ募集では、初期費用の意味が変わります。

エリア礼金相場敷金相場保証金・敷引き一時金合計目安
首都圏0〜1か月。人気物件では1か月が残りやすい0〜2か月原則なし月額賃料の0〜3か月
関西圏0〜1か月。物件により保証金表示0〜1か月または保証金保証金2〜4か月、敷引き1〜2か月の表示に注意月額賃料の2〜6か月
福岡0〜1か月。中心部・築浅では1か月もある0〜2か月一部で敷引き・償却表示あり月額賃料の1〜4か月
北海道0が目立つ。物件により礼金あり0〜1か月原則なし月額賃料の0〜2か月

この表は募集条件を読むための実務目安です。公的統計で確認できるのは主に三大都市圏であり、福岡や北海道はエリア、築年数、法人契約需要、繁忙期によって変わります。検索サイトで比較するときは、同じ駅距離、築年数、間取りで「礼金なし」「敷金なし」「退去時清掃費」「短期解約違約金」を横並びにします。

礼金ゼロ物件のデメリット

礼金ゼロは初期費用を下げますが、総額が必ず安くなるとは限りません。SUUMOのゼロゼロ物件解説でも、家賃が相場より高め、退去時クリーニング費の請求、短期解約違約金といった注意点が挙げられています( https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chintai/fr_money/chintai_shokihiyou_shikirei/ )。

実務では、1年未満の解約で家賃1〜2か月分の短期解約違約金がかかる、退去時清掃費が定額、保証会社加入が必須で保証料が高い、といった条件があります。居住期間別の総支払額で比べます。

敷引特約と礼金の関係(関西圏の論点)

関西圏では、契約時に「保証金」を預け、退去時にあらかじめ決めた「敷引き」を差し引いて残額を返す仕組みが使われてきました。礼金がゼロでも、敷引き部分が返らない一時金として働くため、実質的には礼金に近い負担になることがあります。

最高裁平成23年3月24日判決は、居住用建物の敷引特約について、敷引金の額が高額に過ぎると評価される場合は、特段の事情がない限り消費者契約法10条で無効となり得ると判断しました。一方、その事案では、敷引額が賃貸借の経過年数に応じて月額賃料の2倍弱から3.5倍強に設定され、礼金など他の一時金を徴収していない事情も踏まえ、有効とされています。RETIOの最高裁判例一覧でも、同判決と平成23年7月12日判決が敷引特約の主要判例として整理されています( https://www.retio.or.jp/supreme_search_category/s-case-3-3/ )。

ここで重要なのは、「3.5倍なら常に有効」「3.5倍を超えたら必ず無効」という機械的な線引きではない点です。通常損耗の補修費相当額、月額賃料、礼金や更新料など他の一時金、契約時の説明、地域慣行を総合して判断されます。下級審では、賃料の3.5倍を超える敷引額や、礼金・更新料と重なる一時金が問題視されることもあります。

借主側は、初期費用明細で「保証金4か月、敷引2か月」と書かれている場合、戻る可能性があるのは残り2か月分だけだと理解します。礼金ゼロと表示されていても、敷引きがあるなら戻らない費用はゼロではありません。貸主・管理会社側は、敷引きの金額、返還しない理由、通常損耗との関係を重要事項説明書と契約書で明確にしておく必要があります。

初期費用全体での見方

初期費用は、礼金、敷金、仲介手数料、保証料、火災保険料、鍵交換費、前家賃、日割り家賃、退去時清掃費の前払いを合計して比較します。礼金、仲介手数料、保証料は原則として返還されません。敷金は民法622条の2により、未払賃料や原状回復費などを控除した残額が返還対象になります。

費目戻る可能性見るポイント
礼金原則なし家賃何か月分か、交渉余地があるか
敷金控除後に返還通常損耗を差し引かれていないか
仲介手数料原則なし家賃1か月分+消費税を超えていないか
保証料原則なし初回、更新、月額の総額
火災保険料条件次第解約返戻金の有無
鍵交換費・清掃費原則なし任意か必須か、金額が妥当か

関西圏の保証金・敷引きは、預けた保証金から一定額を返さない仕組みとして説明されます。名前が「保証金」でも、敷引き部分は礼金に近い戻らない一時金として働くことがあります。

具体例

礼金に該当する例:

  • 契約時に貸主へ支払う「礼金1か月」
  • 初期費用明細に返還なしの一時金として記載された礼金
  • 人気物件で賃料とは別に設定された契約時一時金
  • 地域慣行として設定される入居時の謝礼金
  • 法人契約で条件交渉の対象になる礼金

礼金ではない例:

  • 退去時に精算される敷金
  • 関西圏などで使われる保証金のうち返還対象部分
  • 仲介会社へ支払う仲介手数料
  • 家賃保証会社へ支払う保証料
  • 鍵交換費、火災保険料、クリーニング特約
  • 借地借家法上の更新拒絶や立退料そのもの

礼金ゼロでも「短期解約違約金」「退去時清掃費」「保証会社必須」などで総額が上がることがあります。逆に礼金がある物件でも、家賃が低い、敷金がある、保証料が軽いなどで総額が抑えられる場合があります。

実務上のポイント

契約前の交渉では、礼金は比較的調整対象になりやすい費目です。空室期間が長い物件、繁忙期を外した申込み、入居日を早められる場合、減額を相談できることがあります。契約後に返還を求めても、明確に合意して支払った礼金は返還が難しいのが通常です。

礼金交渉のメール例:

「申込みを検討している○○マンション○号室について、初期費用のご相談をさせてください。長期入居を予定しており、入居日も貸主様の希望に合わせて前倒し可能です。礼金部分について、半月分またはゼロへの調整余地があればご確認いただけますでしょうか。難しい場合は、フリーレントや鍵交換費の扱いも含めて、総額で相談できる範囲を伺えますと幸いです。」

借主は、初期費用明細で「礼金」「敷金」「保証金」「償却」「敷引き」「クリーニング費」を分けて確認します。敷金は退去後1〜2か月で精算・返還される運用が多く、UR賃貸住宅では契約解除日から原則30日以内に精算後の敷金を返還すると案内しています( https://www.ur-net.go.jp/chintai/faq/ )。

貸主や管理会社は、礼金の名目、返還しない扱い、金額、支払時期を契約書と重要事項説明書に明確に記載します。重要事項説明では、借主が初期費用の性質を理解できるよう、敷金や仲介手数料との違いを説明できる資料にしておくことが望ましいです。

関連法令・出典

判決全文は裁判所 判例検索システムから判決日・事件番号で検索できる。

関連用語

さらに詳しく

退去費用の見積もりに納得いかない方へ

国交省ガイドラインに沿った妥当性を、当社が無料で診断します。請求内訳を写真かPDFでお送りください。

退去費用を無料で相談

ガイドライン解説を読む →