更新料なし物件は、契約更新時にまとまった支出を避けられる点で魅力があります。2年ごとに家賃1ヶ月分の更新料がかかる物件と比べると、4年、6年と長く住むほど差が広がります。家賃10万円の物件で更新料1ヶ月分なら、4年住むと1回、6年住むと2回の更新料が発生し、更新料なし物件との差は10万円、20万円と大きくなります。
ただし、更新料なしという表示だけで得かどうかは決まりません。月額家賃が高め、礼金が高い、保証会社更新料がある、短期解約違約金が重い、退去時のクリーニング特約が高いなど、別の条件で調整されていることがあります。物件選びでは、更新料の有無ではなく、住む予定期間の総額で判断します。
更新料なし物件の典型
関西圏の物件
大阪、兵庫、奈良など関西圏では、首都圏に比べて更新料なしの物件が多く見られます。地域慣習として、2年ごとに家賃1ヶ月分の更新料を支払う条件が一般化していないエリアがあるためです。更新時の一時支出を避けたい借主にとっては、探しやすい地域といえます。
ただし、関西でもすべての物件が更新料なしではありません。京都では更新料の慣習が残る物件がありますし、大手管理会社や個別のオーナー方針で更新料を設定することもあります。地域名だけで判断せず、募集図面と契約書を確認してください。
新築・築浅の空室対策
新築や築浅でも、周辺競合が多い地域では更新料なしを打ち出すことがあります。初期費用を抑えるキャンペーンと同じく、借主に選ばれやすくするための募集条件です。特に単身向け物件では、入居者の入れ替わりを減らし、長く住んでもらう目的で更新料なしにすることがあります。
一方で、新築や築浅は月額家賃そのものが高めになりやすいです。更新料なしでも、周辺の同条件物件より家賃が5,000円高ければ、2年間で12万円の差になります。家賃10万円で更新料10万円の物件より、家賃10.5万円で更新料なしの物件のほうが、2年総額では高くなることがあります。
空室期間を避けたい物件
築年数が古い、駅から距離がある、競合物件が多い場合、貸主は更新料なしにして入居継続を促すことがあります。更新料があると、借主が更新タイミングで退去を検討しやすくなります。更新料なしなら、借主は更新月の負担を理由に退去しにくくなり、貸主は空室リスクを下げられます。
このような物件では、借主側にもメリットがあります。ただし、建物の状態、設備の古さ、退去時費用の特約は慎重に見ます。更新料がない代わりに、退去時のクリーニング費用や原状回復特約が重い場合、退去時に負担が移ることがあります。
メリット
更新時の支出を抑えられる
更新料なし物件の最大のメリットは、更新時にまとまった支出が発生しにくいことです。家賃8万円、更新料1ヶ月分の物件なら、2年ごとに8万円が必要です。更新料なしなら、この支出を避けられます。
住居費は毎月の家賃だけでなく、更新月の一時金も家計に影響します。更新料がある物件では、更新時期に合わせて貯蓄しておく必要があります。更新料なしなら、家計の見通しが立てやすく、急な支出を抑えやすくなります。
長期居住で差が出やすい
長く住むほど、更新料なしのメリットは大きくなります。2年契約で更新料1ヶ月分の物件では、4年住むと1回、6年住むと2回、8年住むと3回の更新料が発生します。家賃10万円なら、6年で20万円、8年で30万円の差です。
特に子育て世帯や勤務地が安定している人など、長期居住を前提にする場合は、更新料なし物件の総額メリットが出やすくなります。引越し回数が少ないほど、初期費用や引越し代も抑えられます。
更新時に退去を迷いにくい
更新料がある物件では、更新時期になると「このまま払って住むか、引越すか」を考える人が多くなります。更新料なしなら、更新時の一時金が理由で退去を急ぐ必要が減ります。住環境に満足しているなら、そのまま住み続けやすいです。
貸主側にも、安定入居が続くメリットがあります。借主が更新料を理由に退去すると、空室期間、募集費用、原状回復費が発生します。更新料なしは、借主と貸主の双方にとって継続入居を選びやすくする条件といえます。
デメリット
月額家賃が高めのことがある
更新料なし物件で最も注意したいのは、月額家賃に条件が反映されている可能性です。家賃が周辺より月5,000円高ければ、2年間で12万円、4年間で24万円の差になります。更新料1ヶ月分を払う物件より、総額で高くなることがあります。
比較するときは、同じ駅、同じ間取り、同程度の築年数で、更新料あり物件となし物件の家賃差を見ます。更新料なし物件が月3,000円高いだけなら、2年で7.2万円です。更新料あり物件の更新料が10万円なら、2年時点では更新料なしが有利です。月7,000円高いなら、2年で16.8万円となり、更新料なしのメリットが薄れます。
保証料やサポート費用がある
更新料なしと書かれていても、保証会社更新料、火災保険料、24時間サポート費用は発生することがあります。これらは賃貸借契約の更新料とは別の費用です。2年ごとに保険料2万円、毎年保証会社更新料1万円が必要なら、更新時や年ごとの支出は残ります。
募集図面で「更新料なし」と見たら、次に「更新事務手数料」「保証会社更新料」「火災保険」「サポート費用」を確認します。更新料なしという表示が、更新時費用すべてなしを意味するとは限りません。
特に保証会社更新料は見落としやすい費用です。毎年1万円の保証更新料がある場合、2年で2万円、6年で6万円になります。賃貸借契約の更新料がなくても、別契約の更新費用が積み上がれば、更新料あり物件との差は縮まります。
短期解約違約金が重いことがある
更新料なし物件の中には、短期解約違約金を設定しているものがあります。たとえば、1年未満の解約で家賃2ヶ月分、2年未満の解約で家賃1ヶ月分といった条項です。短期で引越す可能性がある人にとっては、更新料よりこちらのほうが大きな負担になることがあります。
短期解約違約金は、契約開始からの期間を基準にすることが多いですが、更新後の期間を基準にする条項もあります。更新料なしでも、解約時の費用が重ければ総額で不利になります。契約前に、違約金の起算点、期間、金額、適用除外を確認してください。
総額比較の計算
2年居住で比較する
2年だけ住む予定なら、更新料は発生しないか、退去時期によっては関係が薄いことがあります。契約満了前に退去するなら、更新料あり物件でも更新料は通常発生しません。この場合は、初期費用、月額家賃、短期解約違約金、退去費用を中心に比較します。
家賃8万円、更新料あり、初期費用40万円の物件と、家賃8.5万円、更新料なし、初期費用35万円の物件を比べます。2年家賃は前者192万円、後者204万円です。初期費用を足すと前者232万円、後者239万円で、更新料なし物件のほうが高くなります。2年で退去するなら、更新料なしのメリットは限定的です。
4年居住で比較する
4年住むと、2年契約の更新料は1回発生します。家賃8万円、更新料1ヶ月分なら8万円です。先ほどの例に更新料を入れると、前者は240万円、後者は239万円となり、ほぼ同じになります。
このように、更新料なし物件は住む期間が長くなるほど有利になりやすいです。ただし、月額家賃差が大きい場合は、更新料なしでも逆転しないことがあります。
6年居住で比較する
6年住むと、更新料は2回発生します。家賃8万円、更新料1ヶ月分なら合計16万円です。家賃差が月5,000円なら、6年で36万円の差になります。更新料なし物件が月5,000円高い場合、更新料16万円を避けても、家賃差で20万円多く払う計算です。
長期居住では、更新料だけでなく毎月の家賃差が大きく効きます。更新料なし物件を選ぶときは、長く住むほど得になるとは限らず、家賃差と更新料回数のバランスを見る必要があります。
更新料なし物件の探し方
ポータルサイトの条件で絞る
賃貸ポータルサイトでは、こだわり条件やフリーワードで「更新料なし」を指定できる場合があります。検索するときは、希望エリアを広げすぎると条件の比較が難しくなるため、駅や市区町村を絞って見ます。
検索結果では、月額家賃、共益費、礼金、敷金、保証料、短期解約違約金を一緒に確認します。更新料なし物件だけを並べるのではなく、同条件の更新料あり物件も見て、家賃差を把握します。
管理会社に更新時費用を確認する
募集図面に更新料なしと書かれていても、更新事務手数料や保証会社更新料があることがあります。内見や申込前に、「賃貸借契約の更新料はなしで間違いないか」「更新事務手数料はあるか」「火災保険と保証会社の更新費用はいくらか」を確認してください。
メールで確認しておくと、後で説明と契約書の内容が違った場合に確認しやすくなります。契約前の重要事項説明でも、更新時費用の欄を必ず見ます。
確認時は、「2年後に通常発生する費用をすべて教えてください」と聞くと漏れを減らせます。更新料という名前がなくても、再契約料、更新事務手数料、サポート更新料など別名の費用がある場合があります。
注意すべき契約条項
更新事務手数料だけ残る条項
「更新料なし」と聞いていたのに、契約書には更新事務手数料が書かれていることがあります。更新料は貸主に支払う費用、更新事務手数料は管理会社などの事務手続き費用として分けられるためです。更新料なしでも、更新事務手数料が0.5ヶ月分なら、実質的な更新時負担は残ります。
契約書では、「契約更新」「更新手続」「事務手数料」「再契約」などの欄を確認します。定期借家契約では、更新ではなく再契約手数料として費用が発生することもあります。
定期借家契約
定期借家契約は、契約期間満了で終了する契約です。普通借家契約のような法定更新はなく、住み続けるには再契約が必要になります。募集上は更新料なしでも、再契約料や再契約事務手数料が設定されている場合があります。
借地借家法は、普通借家と定期借家を区別しています。定期借家では、期間満了後に当然に住み続けられるわけではありません。更新料なしという表示だけでなく、契約種類を確認してください。
原状回復・クリーニング特約
更新料なしで長く住む予定でも、退去時費用は別問題です。クリーニング費用、エアコンクリーニング費用、畳表替え、鍵交換費用などの特約がある場合、金額と負担範囲を確認します。
通常損耗や経年変化は原則として借主負担ではありませんが、明確な特約があると一定の費用負担が問題になります。更新料なしで月々の負担が軽く見えても、退去時に高額請求されれば総額メリットが減ります。
結局どっちが得か
長期居住なら更新料なしが有利になりやすい
4年以上住む予定がある、更新月の一時支出を避けたい、家賃が周辺と大きく変わらない場合は、更新料なし物件が有利になりやすいです。特に家賃差が小さく、保証会社更新料や事務手数料も低いなら、長期居住で差が出ます。
判断基準は、更新料なし物件の家賃差が、更新料の節約額を上回るかどうかです。月額家賃差 × 居住月数 と、回避できる更新料合計を比べます。家賃差のほうが小さければ、更新料なしのメリットが残ります。
短期居住なら初期費用と違約金を優先する
1〜2年で引越す可能性が高いなら、更新料なしのメリットは小さくなります。更新日前に退去すれば、更新料あり物件でも更新料は通常発生しないからです。この場合は、初期費用、短期解約違約金、解約予告期間、退去費用を優先して比較します。
物件選びでは、入居予定期間を先に決めます。更新日をまたぐ可能性が高いなら更新料を重視し、またがない予定なら初期費用と月額家賃を重視します。予定が読めない場合は、更新料なしで家賃差が小さい物件を選ぶと、将来の選択肢を残しやすくなります。
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出典・参考文献
- 民法(e-Gov 第90条・第91条・第621条): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 借地借家法(e-Gov 普通借家・定期借家): https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- 消費者契約法(e-Gov 第10条): https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061
- 最高裁判所 平成23年7月15日第二小法廷判決(更新料条項と消費者契約法10条)