賃貸更新料の相場は、地域差が大きい費用です。首都圏では家賃1ヶ月分を中心に設定される物件が多い一方、関西圏では更新料なしの物件も多く見られます。同じ家賃8万円の部屋でも、東京では2年ごとに8万円、大阪では0円、京都では1ヶ月分というように、地域や管理会社の方針で差が出ます。
相場を調べるときは、「家賃の何ヶ月分か」だけで判断しないことが重要です。更新周期が1年か2年か、更新事務手数料が別にあるか、保証会社更新料や火災保険料が同時に発生するかで、実際の負担は変わります。この記事では、借主が契約前や更新前に確認すべき目安を、地域別・物件別に整理します。
全国平均の相場
家賃1ヶ月分が中心という見方
居住用賃貸の更新料は、首都圏を中心に「家賃1ヶ月分」が一つの基準として使われています。2年契約で家賃1ヶ月分なら、月額家賃とは別に、2年ごとに1ヶ月分の一時金を支払う形です。家賃6万円なら6万円、家賃10万円なら10万円が目安になります。
ただし、全国平均という言葉だけで判断すると危険です。更新料の有無は地域慣習の影響が強く、更新料ありの地域と更新料なしの地域を単純に平均しても、自分の物件に使える数字になりにくいためです。契約書では、月数、算定対象、更新期間を確認します。
算定対象にも違いがあります。「賃料1ヶ月分」と書かれていれば共益費や管理費を含まないことが多いですが、「月額総賃料1ヶ月分」と書かれていれば、共益費や管理費を含む可能性があります。「新賃料1ヶ月分」とある場合、更新時に家賃が上がると更新料も増えることがあります。
契約前の見積書では、更新料が初期費用に入っていないため見落とされやすいです。入居時に支払うお金ではありませんが、長く住むなら将来の住居費です。物件比較では、月額家賃に加えて、更新料を居住予定月数で割った金額も見てください。2年ごとに12万円なら、月あたり5,000円相当の負担です。
更新周期で年あたり負担が変わる
同じ1ヶ月分でも、2年ごとに発生するのか、1年ごとに発生するのかで負担感は変わります。家賃12万円、更新料1ヶ月分、2年更新なら、年あたりに直すと6万円相当です。1年更新で1ヶ月分なら、年あたり12万円相当になります。
更新料の相場を比較するときは、次の式で年あたり負担を見ます。
更新料 ÷ 更新期間の年数 = 年あたり更新料
たとえば家賃9万円で、2年ごとに1ヶ月分なら年4.5万円です。1年ごとに0.5ヶ月分でも年4.5万円で、年あたりの負担は同じになります。月数だけを見ると片方が安く見えますが、更新周期を入れると評価が変わります。
首都圏の相場
東京は1ヶ月分が多い
東京の賃貸では、更新料が家賃1ヶ月分とされる物件が多く見られます。募集図面やポータルサイトには「更新料: 新賃料1ヶ月」「更新事務手数料: 0.25ヶ月」などと記載されることがあります。借主側は、初期費用に加えて2年後の更新費用まで見ておく必要があります。
東京で注意したいのは、家賃が高いほど更新料の絶対額も上がることです。家賃15万円の物件で1ヶ月分なら15万円、2ヶ月分なら30万円です。更新月には通常の家賃も支払うため、手元資金としては家賃2ヶ月分以上が一時的に必要になることがあります。
神奈川・千葉・埼玉も首都圏慣習が残る
神奈川、千葉、埼玉でも、更新料1ヶ月分の物件は多くあります。東京より家賃が低い地域でも、月数が同じなら更新料は家賃に連動します。家賃7万円なら7万円、家賃9万円なら9万円という形です。
郊外では、空室対策として更新料なしや0.5ヶ月分に抑える物件もあります。築年数が古い、駅から距離がある、周辺に競合物件が多い場合は、更新料を下げて募集することがあります。更新料なしだから必ず有利とは限りませんが、長期居住を考える借主には比較材料になります。
首都圏で同じ沿線の物件を比べると、駅近の築浅物件は更新料あり、駅から離れた物件は更新料なしというように、募集力の差が条件に出ることがあります。更新料の有無だけでなく、家賃、通勤時間、設備、退去時費用まで含めて比較します。
関西の相場
大阪・兵庫は更新料なしも多い
大阪や兵庫では、首都圏に比べて更新料なしの物件が多い傾向があります。契約更新時に大きな一時金が発生しないため、長く住むほど支出を読みやすいというメリットがあります。更新料なし物件を探す人にとっては、関西圏は候補を見つけやすい地域です。
ただし、更新料なしでも、保証会社更新料、火災保険料、24時間サポート費用が発生することはあります。「更新時費用ゼロ」とは限りません。契約更新に合わせて保険や保証が更新される場合、2年ごとに数万円の支払いが必要になることがあります。
京都は更新料の慣習が残る場合がある
関西圏の中でも、京都では更新料が設定される物件が見られます。学生向け物件、単身向け物件、地域密着の管理会社が扱う物件では、更新料が契約条件に入っていることがあります。関西だから更新料はないと決めつけず、物件単位で確認してください。
京都のように地域内でも慣習が分かれる場所では、比較対象を同じ市区町村や同じ沿線で見ることが重要です。大阪の条件をそのまま京都の相場判断に使うと、実態とずれることがあります。
地方都市の相場
管理会社と物件ごとの差が大きい
地方都市では、更新料なし、定額1万円から2万円、家賃0.5ヶ月分、家賃1ヶ月分など、条件に幅があります。大手管理会社が首都圏型の条件を採用する場合もあれば、地元慣習として更新料を取らない場合もあります。
地方で相場を見るときは、同じ市内でも、駅近、大学周辺、転勤族向け、ファミリー向けで違いがあります。単身向けで入退去が多い物件は更新料を設定し、長期居住を狙うファミリー物件では更新料なしにするなど、募集戦略によって変わります。
定額制の更新料もある
地方では、家賃何ヶ月分ではなく、更新料2万円、更新手数料1.1万円といった定額制の物件もあります。家賃が高い物件では定額制のほうが負担が軽く、家賃が低い物件では家賃比で見ると高く感じることがあります。
定額制でも、契約書に明確な記載があり、金額が過大でなければ支払い義務が認められやすいです。金額が小さいから確認不要ではなく、支払先、消費税、更新周期を見ておきます。
定額制を比較するときは、家賃に対する割合に直すと分かりやすくなります。家賃5万円で更新料2万円なら0.4ヶ月分、家賃10万円で更新料2万円なら0.2ヶ月分です。同じ2万円でも、低家賃の物件ほど負担割合は高くなります。
物件タイプ別の相場
マンションとアパート
マンションとアパートで、更新料の月数に明確な全国ルールがあるわけではありません。首都圏ではどちらも1ヶ月分が見られます。ただし、築浅マンションや設備の整った物件では、更新事務手数料や保証会社更新料を含めた更新時総額が高くなりやすいです。
アパートでは、空室対策として更新料なし、0.5ヶ月分、定額制にしている物件もあります。築年数が古い物件ほど更新料が安いとは限りませんが、借主の入れ替わりを避けたい貸主は、更新料を抑えることがあります。
分譲賃貸
分譲賃貸は、個人オーナーが所有するマンション一室を貸す形が多く、条件が物件ごとに大きく変わります。更新料1ヶ月分に加え、解約予告期間が2ヶ月前、管理規約に基づく手続き、火災保険や保証会社の指定があることもあります。
分譲賃貸で注意すべきなのは、更新料そのものより、退去や更新の手続きが厳格になりやすい点です。更新前に退去する場合、2ヶ月前通知に間に合わず、更新料と次月家賃が同時に問題になることがあります。
高級賃貸・法人契約
高級賃貸では、家賃が高いため、1ヶ月分でも更新料の絶対額が大きくなります。家賃30万円なら1ヶ月分で30万円です。さらに、保証会社更新料や火災保険料も一般的な物件より高くなることがあります。
法人契約では、会社の社宅規程により、更新料を会社が負担する場合と入居者が負担する場合があります。契約名義が法人でも、実際の負担者が自分なら、社内規程と賃貸借契約の両方を確認してください。
社宅や転勤者向け物件では、解約予告期間が2ヶ月前になっていることもあります。更新料の月数が標準的でも、退去判断が遅れると更新料と余分な家賃が重なります。相場比較では、更新料の額だけでなく、退去時の動きやすさも見ておくと実務上の負担を読みやすくなります。
更新料に消費税はかかるか
住居用は非課税が基本
居住用建物の賃貸借に伴う家賃は、消費税が非課税です。更新料も、住居用の賃貸借に伴う対価として、非課税として扱われるのが通常です。請求書で「更新料 80,000円」とだけ表示され、消費税が別に加算されていないケースが多いです。
一方、事務所や店舗など事業用物件では、賃料や更新料に消費税が関係することがあります。この記事は居住用賃貸を前提にしています。住居兼事務所や店舗付き住宅などの場合は、用途と契約内容を確認してください。
更新事務手数料は課税されることがある
更新事務手数料は、管理会社や仲介会社の事務手続きの対価として請求される場合があり、消費税が加算されることがあります。請求書に「更新事務手数料 20,000円(税込22,000円)」のように書かれていれば、更新料とは別の扱いです。
借主側で見るべきなのは、税込総額です。更新料が非課税でも、事務手数料に消費税が乗れば支払額は増えます。内訳がない請求書では、消費税の根拠も分からないため、項目別の明細を求めてください。
月額家賃別の更新料シミュレーション
家賃別の目安
更新料が家賃1ヶ月分の場合、月額家賃ごとの目安は次の通りです。
| 月額家賃 | 0.5ヶ月分 | 1ヶ月分 | 1.5ヶ月分 | 2ヶ月分 |
|---|---|---|---|---|
| 6万円 | 3万円 | 6万円 | 9万円 | 12万円 |
| 8万円 | 4万円 | 8万円 | 12万円 | 16万円 |
| 10万円 | 5万円 | 10万円 | 15万円 | 20万円 |
| 12万円 | 6万円 | 12万円 | 18万円 | 24万円 |
| 15万円 | 7.5万円 | 15万円 | 22.5万円 | 30万円 |
この表は更新料だけの金額です。実際の更新月には、通常の家賃、更新事務手数料、火災保険料、保証会社更新料が加わります。家賃8万円の物件で更新料1ヶ月分なら、更新月の支払いは家賃8万円と更新料8万円だけで16万円になり、さらに別費用が加わる可能性があります。
共益費を含むかどうかでも差が出ます。家賃8万円、共益費5,000円の物件で「賃料1ヶ月分」なら8万円ですが、「月額総賃料1ヶ月分」なら8.5万円です。小さな差に見えても、更新事務手数料も同じ基準で計算されると総額が変わります。
高すぎると感じたら相場資料を集める
更新料が2ヶ月分以上、または周辺物件より明らかに高いと感じる場合は、近隣の募集条件を集めます。同じ駅、同じ間取り、同程度の築年数で、更新料が何ヶ月分かを比較します。ポータルサイトのスクリーンショット、募集図面、管理会社からの見積もりは交渉資料になります。
ただし、相場より高いというだけで直ちに無効になるわけではありません。最高裁平成23年7月15日判決は、契約書の記載が明確で、金額が高額に過ぎるなど特段の事情がない限り、更新料条項を消費者契約法10条で無効とはしていません。高いと感じる場合は、賃貸更新料が高すぎる場合で減額交渉の順番を確認してください。
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更新時の請求書が相場より高いと感じる場合は、賃貸リフォーム研究所のお問い合わせフォームから項目別の確認をご相談ください。退去費用も含めて比較する場合は無料見積もりシミュレーションをご利用ください。
出典・参考文献
- 民法(e-Gov 第90条・第91条): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 借地借家法(e-Gov 普通借家・定期借家): https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
- 消費者契約法(e-Gov 第10条): https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061
- 最高裁判所 平成23年7月15日第二小法廷判決(更新料条項と消費者契約法10条)