用語集

定期借家契約

ていきしゃくやけいやく

定期借家契約とは、借地借家法38条に基づき、契約期間満了で更新なく終了する建物賃貸借契約。書面契約と事前説明書面が重要です。

定期借家契約とは

定期借家契約とは、借地借家法38条に基づき、契約期間の満了により更新なく終了する建物賃貸借契約です。普通借家契約では期間満了後も更新が予定され、貸主が更新を拒絶するには正当事由が必要です。これに対し定期借家契約は、手続き要件を満たせば、あらかじめ定めた期間で契約を終了させることができます。

制度は1999年12月の借地借家法改正で導入され、2000年3月に施行されました。転勤中の自宅、建替えまでの一時利用、将来の売却予定がある物件など、貸主が期間を区切って貸したい場面で使われます。借主にとっても、普通借家より賃料条件が抑えられた物件や、期間限定のハイグレード物件を借りられる場合があります。

ただし、定期借家契約は契約書に名称を書くだけでは足りません。契約は書面または電磁的記録で行い、契約とは別の書面等で「更新がなく、期間満了で終了する」ことを事前に説明する必要があります。この手続きが不十分だと、定期借家としての効力が争われます。

賃貸借契約での扱い

定期借家契約は建物の賃貸借契約の一類型です。民法の賃貸借規定に加えて、借地借家法38条の特別ルールが適用されます。契約期間は1年未満でも設定できますが、期間を定めない契約にはできません。

借地借家法38条は、定期建物賃貸借について、公正証書等の書面または電磁的記録による契約を求めています。さらに貸主は、契約締結前に、契約更新がなく期間満了により終了する旨を、契約書とは別に書面等で説明しなければなりません。国土交通省の定期借家制度資料も、契約書とは別の説明書面が必要だと案内しています( https://www.mlit.go.jp/common/001170116.pdf )。

契約期間が1年以上の場合、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に、借主へ終了通知をする必要があります。この通知をしなかった場合、貸主は期間満了による終了を借主へ対抗できない時期が生じます。退去時の原状回復については、定期借家でも普通借家でも、経年劣化や通常損耗を借主負担から除く民法621条と国土交通省ガイドラインの考え方が基本です。

普通借家契約との違い

区分定期借家契約普通借家契約
更新期間満了で終了し、更新はない。再契約は別契約原則として更新が予定される
契約方式書面または電磁的記録が必要口頭でも成立し得るが書面化が実務上重要
事前説明契約書とは別の説明書面等が必要定期借家特有の別書面説明は不要
終了通知1年以上なら満了1年前から6か月前まで更新拒絶には通知と正当事由が必要
賃料増減請求特約で借地借家法32条を排除できる減額請求権の排除は制限される

普通借家契約では、貸主からの更新拒絶や解約申入れに借地借家法28条の正当事由が必要です。定期借家契約では、更新がないことを借主が理解したうえで契約する代わりに、期間満了による終了が制度の中心になります。

具体例

定期借家契約に該当しやすい例:

  • 海外転勤中の自宅を3年間だけ貸す
  • 建替え予定までの2年間、既存建物を賃貸する
  • 学生向けに卒業時期までの期間を明確にして貸す
  • 再開発や売却予定がある物件を期限付きで貸す
  • 高級分譲マンションを所有者の帰任まで一時的に賃貸する

定期借家契約として扱いにくい例:

  • 契約書に「定期」と書いただけで、別書面の事前説明がない
  • 期間満了後も当然に更新すると説明して募集している
  • 契約期間の定めがない
  • 普通借家契約の更新時に、借主の理解なく定期借家へ切り替えた
  • 1年以上の契約なのに終了通知の時期を管理していない

実務上のポイント

貸主側は、募集段階から「定期借家」であること、契約期間、再契約の有無、再契約時の審査や費用を明確にします。契約前説明書面、契約書、終了通知の控えは、後日の紛争で重要な証拠になります。管理会社へ任せる場合でも、説明書面の交付日、説明者、借主の受領記録を台帳で管理します。

借主側は、契約満了後に住み続けられる保証がないことを前提に、転居時期、子どもの学区、勤務先、次の住居の初期費用を見込みます。再契約「相談可」と書かれていても、貸主が再契約に応じるとは限りません。再契約料、敷金精算、原状回復、火災保険の期間も合わせて確認します。

退去精算では、契約終了の仕組みと費用負担を分けて考えます。定期借家だからといって、通常損耗や経年劣化まで借主負担になるわけではありません。退去立会いでは、入居時写真、契約書の特約、国土交通省ガイドラインを照合します。

事前説明書面の交付漏れリスク

定期借家契約の紛争で大きいのは、事前説明書面の交付漏れです。借地借家法38条は、契約書とは別に、更新がなく期間満了で終了する旨を説明する手続きを求めています。契約書の中に定期借家条項があるだけでは足りないと争われる余地があります。

貸主側では、説明書面を契約書と別ファイルにし、借主の署名または受領記録を残します。電子契約の場合も、説明書面の提示、閲覧、承諾のログを保存します。借主側では、重要事項説明書、契約書、定期借家説明書の3点がそろっているかを確認します。重要事項説明は宅建業法35条の説明であり、定期借家の別書面説明とは役割が異なります。

借主・貸主双方のメリットとデメリット

借主のメリットは、期間限定のため賃料や初期費用が比較的抑えられること、普通借家では募集されにくい分譲マンションや戸建てに住める機会があることです。短期の赴任、仮住まい、子どもの受験期間など、利用期間が合う場合には選択肢になります。

借主のデメリットは、再契約が保証されないことです。期間満了時に退去が必要になると、引越し費用や次の契約費用がかかります。貸主のメリットは、期間満了で物件を回収しやすいこと、転勤や建替えまでの空白期間を活用できることです。貸主のデメリットは、手続き漏れがあると定期借家としての効力が争われ、予定どおりに物件を戻せないリスクがあることです。

再契約を予定する場合でも、契約期間満了でいったん終了する点は変わりません。貸主側は再契約の審査基準、賃料改定、再契約料、保証会社の再審査を事前に示し、借主側は「更新」と「再契約」を混同しないよう確認します。

賃料増減請求権と特約

普通借家契約では、借地借家法32条により、税負担、土地建物価格、近隣賃料などの変動で賃料が不相当になった場合、貸主・借主双方が増額または減額を請求できます。一定期間の増額をしない特約は有効ですが、借主の減額請求権を一律に排除する特約には制限があります。

定期借家契約では、借地借家法38条7項により、賃料改定に関する特約を置いた場合、32条の借賃増減請求権を排除できます。長期の定期借家では、賃料改定条項がないまま物価や税負担が変わると、貸主・借主のどちらかに負担が偏ることがあります。契約前に、改定時期、改定基準、協議方法を具体的に確認します。

関連法令・出典

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