敷金なし物件のデメリット5選 - 退去費用・違約金・保証料の落とし穴

監修

賃貸リフォーム研究所 編集部

原状回復・退去費用の専門メディア

賃貸物件の原状回復・退去費用トラブルに関する正確な情報発信を行う編集チーム。国土交通省ガイドラインや民法の規定に基づき、退去者・管理会社双方の視点から解説記事を制作。

敷金なし物件は、入居時の初期費用を抑えられる点が魅力です。家賃8万円の物件で敷金1か月分が不要なら、契約時の支払いは8万円下がります。引越し費用や家具家電の購入が重なる時期には大きな差です。

しかし、敷金なしは「退去費用なし」ではありません。敷金は、未払い賃料や借主負担の原状回復費用を担保する預かり金です。預けていないだけなので、退去時に借主負担の費用が発生すれば、別途支払う必要があります。

この記事では、敷金なし物件のデメリットを5つに分け、敷金あり物件との総額比較まで整理します。物件選びでの総合判断は敷金礼金なし物件はやめたほうがいい?もあわせて確認してください。

敷金なし物件のデメリット5選

敷金なし物件の主なデメリットは次の5つです。

デメリット何が起きるか確認書類
退去費用を自費で払う敷金相殺ができない契約書、退去精算書
短期解約違約金早期退去で家賃1〜2か月分特約欄
保証会社必須初回・更新・月額保証料保証委託契約
家賃上乗せ初期費用の代わりに月額が高い募集図面、周辺物件
入居審査が慎重滞納・退去費用未払いを警戒申込条件

敷金なし物件のデメリットは、入居時ではなく退去時と毎月費用に出ます。契約時の見積書だけを見ると安く見えても、2年住んだ後の総額では敷金あり物件より高いことがあります。

民法622条の2では、敷金は借主の金銭債務を担保するために交付される金銭とされています。敷金がない物件では、この担保がありません。そのため貸主は、保証会社、特約、違約金、家賃設定でリスクを調整することがあります。

デメリット1: 退去費用を退去後に自費で支払う

敷金なし物件の一番分かりやすいデメリットは、退去時に費用を相殺できないことです。

敷金あり物件では、退去費用が発生した場合、預けた敷金から差し引かれます。敷金10万円、退去費用4万円なら、6万円が返金されます。追加で支払う必要はありません。

敷金なし物件では、同じ退去費用4万円でも、退去後に4万円を支払います。請求額そのものは同じでも、退去時の手元資金への影響が違います。新居の初期費用、引越し代、不用品処分費と重なるため、負担感は大きくなります。

退去費用には、ハウスクリーニング、エアコン洗浄、借主の過失によるクロス補修、床補修、水回りの汚損補修などがあります。国土交通省ガイドラインでは、通常損耗や経年変化は貸主負担が基本ですが、借主の故意・過失や善管注意義務違反による損耗は借主負担です。

敷金なし物件では、退去時の請求に備えて、家賃1か月分程度を別に残しておくと安心です。実際の費用相場と請求パターンは敷金なし物件の退去費用はいくら?で詳しく解説しています。

デメリット2: 短期解約違約金が設定されることが多い

敷金なし物件では、短期解約違約金が設定されることがあります。代表的な条項は、1年未満の解約で家賃1か月分、半年未満で家賃2か月分、2年未満で家賃1か月分などです。

貸主は、敷金なしで募集することで入居のハードルを下げています。その分、すぐに退去されると、募集費用や原状回復手配の負担を回収しにくくなります。短期解約違約金は、この早期退去リスクを抑えるために置かれます。

注意点は、短期解約違約金が退去費用とは別に発生することです。家賃7万円の物件で、1年未満の違約金7万円、退去時クリーニング4万円、過失補修2万円があると、退去時の請求は13万円になります。

転勤が多い、同棲や結婚で住み替えの可能性がある、学生で卒業時期が読めない、収入が不安定という人は、短期解約違約金を重く見ます。入居時に安くても、1年未満で退去すると通常物件より高くなることがあります。

契約前には、特約欄で対象期間と金額を確認します。「短期解約の場合は違約金を支払う」とだけ書かれ、金額が曖昧な契約は避けたいところです。

デメリット3: 家賃保証会社加入必須・保証料発生

敷金なし物件では、保証会社加入が必須になりやすくなります。敷金という担保がないため、貸主は家賃滞納や退去費用未払いのリスクを保証会社で補います。

保証料にはいくつかの形があります。

保証料の種類見落としやすい点
初回保証料月額賃料等の50%初期費用に入る
更新保証料年1万円2年目以降に発生
月額保証料月額賃料等の1%毎月固定費になる
口座振替手数料月330円など管理費のように続く

家賃8万円、管理費5,000円、初回保証料50%、更新保証料年1万円なら、初回4万2,500円、2年で更新1万円がかかります。敷金1か月分が不要でも、保証料だけで半分以上を使う計算です。

保証会社加入は、募集条件として指定されている場合、借主側が拒否して契約するのは難しいです。連帯保証人を立てれば不要になる物件もありますが、最近は保証会社必須の物件が増えています。

確認すべきなのは、保証会社の有無ではなく総額です。初期費用見積書に初回保証料があり、契約書や保証委託契約書に更新料・月額料があるかを見ます。

デメリット4: 家賃が周辺相場より高い設定

敷金なし物件は、初期費用を下げる代わりに家賃が高めに設定されることがあります。月額差は小さく見えても、長く住むほど負担が増えます。

たとえば、敷金ありで家賃7万円の物件と、敷金なしで家賃7万4,000円の物件を比べます。初期費用では敷金なしが7万円安く見えます。しかし、家賃差4,000円は2年で9万6,000円、4年で19万2,000円です。2年を超えると、家賃差だけで敷金1か月分を上回ります。

家賃比較では、管理費も含めます。家賃が同じでも管理費が高い物件は、毎月の支払いが増えます。さらに、インターネット使用料、サポート費、町内会費、月額保証料が上乗せされていることもあります。

周辺相場の確認は、同じ駅徒歩、築年数、専有面積、構造、設備の物件で行います。敷金なし物件だけを見ていると高いかどうか分かりません。敷金あり物件も含め、2年総額で比べます。

賃貸市場で敷金がどの程度設定されるかは賃貸の敷金相場ガイドでも整理しています。

デメリット5: 入居審査が厳しい場合がある

敷金なし物件は初期費用が低いため申し込みやすい一方、貸主側は未払いリスクを慎重に見ます。敷金がないと、滞納や退去時費用を預かり金から回収できないためです。

その結果、保証会社審査、収入確認、勤続年数、勤務先、過去の滞納履歴、緊急連絡先を細かく確認されることがあります。フリーランス、転職直後、学生、外国籍、生活保護受給者などは、追加書類や保証人を求められることもあります。

もちろん、敷金なしだから必ず審査が厳しいわけではありません。物件や管理会社の方針によります。ただし、敷金あり物件より貸主の担保が少ないため、保証会社や契約条件で補う傾向があります。

申し込み前には、必要書類、保証会社、連帯保証人の要否、初回保証料を確認します。審査に通るか不安な場合は、申込書を出す前に不動産会社へ事情を伝え、通りやすい条件の物件も並行して探します。

敷金あり物件との総額比較

敷金なし物件を判断するときは、2年、4年、6年の総額で比べます。例として、次の条件を置きます。

項目敷金あり物件敷金なし物件
家賃70,000円73,000円
管理費5,000円5,000円
敷金70,000円0円
礼金0円0円
初回保証料37,500円39,000円
退去時定額清掃35,000円50,000円
短期解約違約金なし1年未満で73,000円

2年住む場合、家賃差3,000円は72,000円です。敷金なしで浮いた70,000円は、2年の家賃差でほぼ消えます。さらに退去時定額清掃が15,000円高ければ、総額では敷金なし物件のほうが高くなります。

4年住む場合、家賃差は144,000円です。敷金なしの初期費用メリットを大きく上回ります。6年なら216,000円です。長く住むほど、月額家賃の差が効いてきます。

ただし、敷金は返還される可能性がある預かり金です。敷金あり物件では、退去時費用を差し引いた残額が戻ります。総額比較では、敷金全額を費用として扱うのではなく、返還見込みを置いて比較します。

実務的には、次の3パターンで計算します。

居住期間重視する項目判断
1年未満短期解約違約金敷金なしは不利になりやすい
2年初期費用と退去時費用家賃差と定額費用で比較
4年以上月額家賃家賃上乗せが大きい物件は避ける

敷金なし物件が向いているのは、初期費用を抑える必要があり、短期退去の可能性が低く、家賃が周辺相場と同程度で、退去時費用を準備できる人です。反対に、短期で動く可能性が高い人や退去時にまとまった支払いが難しい人は、敷金あり物件も含めて探すべきです。

契約前に見るべき書類

内見で気に入っても、申し込み前に費用条件を確認します。見るべき書類は、初期費用見積書、募集図面、重要事項説明書、賃貸借契約書案、保証委託契約書です。

初期費用見積書では、敷金がゼロでも、退去時清掃費の前払い、消毒費、サポート費、鍵交換費、保証料が入っていないかを確認します。募集図面では、短期解約違約金や退去時定額費用が小さく書かれていないかを見ます。

契約書案では、原状回復特約、ハウスクリーニング特約、短期解約違約金、敷引き、更新料、保証会社条項を確認します。分からない費用があれば、契約前にメールで質問し、回答を残します。

契約後に「聞いていない」と主張するより、契約前に条件を確認して見送るほうが簡単です。敷金なし物件ほど、契約書の特約欄を丁寧に読む必要があります。

まとめ

敷金なし物件のデメリットは、退去時の自費精算、短期解約違約金、保証会社費用、家賃上乗せ、審査の慎重化です。初期費用が安いことだけで選ぶと、退去時や長期居住時に負担が増えることがあります。

判断するときは、敷金なしという一点ではなく、2年・4年・6年の総額、退去時の支払い、契約書の特約を見ます。費用が明確で、家賃が相場並みで、退去時資金を準備できるなら、敷金なし物件も選択肢になります。

退去費用の請求を受けた後に不安がある場合は、賃貸リフォーム研究所の無料見積もりで、部位別の単価や請求内容の妥当性を確認できます。

出典・参考文献

よくある質問

敷金なし物件の最大のデメリットは何ですか?
退去費用を敷金から相殺できず、退去後にまとまった金額を支払う可能性がある点です。敷金あり物件なら、原状回復費や未払い賃料を敷金から差し引き、残額が返金されます。敷金なし物件では預け金がないため、クリーニング費、過失による修繕費、違約金がそのまま請求されます。
退去費用はどう請求されますか?
退去立会い後、管理会社が精算書を作成し、ハウスクリーニング費、原状回復費、未払い賃料、短期解約違約金などを請求します。敷金がないため差し引き処理ではなく、指定口座への振込を求められる形が一般的です。請求を受けたら、契約書にある費用か、通常損耗まで含まれていないかを確認します。
短期解約違約金は必ずありますか?
すべての敷金なし物件にあるわけではありません。ただし、初期費用を下げて募集する物件では、1年未満の解約で家賃1か月分、2年未満で家賃1か月分などの条項が入ることがあります。契約書に対象期間と金額が明記されているかを確認し、短期退去の可能性がある人は総額比較に必ず入れます。
保証会社加入は拒否できますか?
募集条件として保証会社加入必須とされている物件では、借主側が一方的に拒否して契約することは難しいです。敷金がない分、貸主は滞納や退去費用未払いのリスクを保証会社で補うためです。確認すべきなのは、初回保証料、更新料、月額保証料、口座振替手数料を含めた総額です。
結局、敷金ありと敷金なしはどちらが得ですか?
住む期間と契約条件で変わります。敷金なしは初期費用を抑えられますが、家賃上乗せ、定額クリーニング、短期解約違約金、保証料があると総額が高くなることがあります。2年、4年、6年の総額で比較し、退去時の支払いを準備できるかまで含めて判断するのが現実的です。

退去費用の見積もりに納得いかない方へ

国交省ガイドラインに沿った妥当性を、当社が無料で診断します。請求内訳を写真かPDFでお送りください。

退去費用を無料で相談

ガイドライン解説を読む →

退去費用を無料で相談