浴室は水回りの中でも汚れが蓄積しやすく、カビ、石けんカス、水垢、排水口のぬめりが同時に発生しやすい場所です。クリーニングで済む場合と、コーキングの打ち替えや浴槽の補修が必要な場合で費用が変わります。
賃貸では、通常使用による軽い水垢や経年劣化を借主へ請求できるとは限りません。一方で、換気不足や清掃不足でカビを広範囲に発生させた場合、借主負担の特別清掃として扱われることがあります。浴室クリーニング費用を見るときは、標準清掃、オプション清掃、補修工事を分けて考えることが重要です。
浴室クリーニング・補修の費用
| 工事内容 | 費用相場 |
|---|---|
| 浴室クリーニング(標準) | 15,000〜20,000円 |
| エプロン内部洗浄込み | 20,000〜25,000円 |
| カビ除去(専門処理) | 10,000〜20,000円 |
| コーキング打ち替え | 15,000〜25,000円 |
| 浴槽のひび割れ補修 | 20,000〜40,000円 |
| 鏡のウロコ除去・交換 | 5,000〜15,000円 |
| シャワーヘッド・ホース交換 | 3,000〜8,000円 |
浴室の見積もりは、汚れを落とすクリーニングと、傷んだ部材を直す補修で性質が異なります。カビ取り、鏡のウロコ除去、エプロン内部洗浄は清掃費に近い項目です。コーキング打ち替え、浴槽のひび割れ補修、シャワーホース交換は補修費に近く、借主の過失があるか、経年劣化かで負担者が変わります。
浴室クリーニング作業内容と所要時間
標準的な浴室クリーニングの作業範囲は、浴槽、壁、床、天井、ドア、蛇口、シャワー、排水口です。業者によっては換気扇カバー、照明カバー、棚、窓内側、浴室小物の簡易洗浄まで含める場合があります。風呂蓋、椅子、桶など取り外しできる小物は、標準作業に含まれるか、別料金かを見積もり時に確認します。
所要時間は標準清掃で2〜3時間程度です。エプロン内部洗浄、浴室乾燥機内部清掃、鏡のウロコ取り、追い焚き配管除菌まで含めると4〜5時間程度になることがあります。浴室乾燥機内部清掃は5,000〜10,000円程度、鏡のウロコ取りは3,000〜8,000円程度が目安です。
賃貸管理では、所要時間も重要です。退去後の原状回復工事、内見、次の入居前清掃の予定が詰まっている場合、オプション作業を追加すると引渡し日程に影響します。繁忙期は業者の予約も取りにくくなるため、退去立会い時点で標準清掃で足りるか、特別清掃が必要かを早めに判定します。
浴室クリーニング料金相場(間取り別)
浴室の広さによって、作業時間と洗剤使用量が変わります。0.75〜1.0坪程度の一般的な賃貸浴室では、12,000〜18,000円程度が目安です。1.25坪のやや広い浴室では14,000〜22,000円程度、1.5坪の戸建て一般サイズでは16,000〜25,000円程度まで上がります。2坪以上の大型浴室や、ガラス面・タイル面が多い浴室では20,000〜35,000円程度になることがあります。
オプションでは、エプロン内部洗浄が5,000〜10,000円程度、追い焚き配管除菌が8,000〜15,000円程度です。エプロン内部は普段見えない場所のため、退去時に開けて初めて汚れが分かることがあります。ただし、構造上外せない浴槽や、管理会社が分解を認めていない設備もあるため、賃貸では事前確認が必要です。
料金比較では、ダスキンやおそうじ本舗のような大手の標準料金、くらしのマーケットなどの掲載業者の地域相場を合わせて見ます。安い見積もりでも、鏡、エプロン、換気扇、浴室小物が別料金なら総額は上がります。見積書は「浴室一式」ではなく、標準範囲と追加範囲が分かる形で保存しておくと、退去精算の説明に使いやすくなります。
借主負担の判断基準
借主負担になるケース
- 清掃を怠ったことによるカビの大量発生
- 排水口の掃除不足による詰まり・悪臭
- 入浴剤の常用による浴槽の変色
- 壁面のタイルを破損した場合
借主負担にならないケース
- 通常使用による水垢・軽微なカビ
- コーキングの経年劣化
- 排水管の老朽化
- 設備の経年による故障
浴室は水を使う場所であるため、軽微なカビや水垢は通常使用でも発生します。国交省ガイドラインの考え方では、借主の通常使用や経年変化による損耗は貸主負担が基本です。借主負担を検討するのは、清掃を長期間怠った結果、通常清掃では落ちない汚れになった場合や、物をぶつけて浴槽・壁・ドアを破損した場合です。
浴室クリーニング費用を抑える5つのコツ
1つ目は、梅雨前や年末などの繁忙期を避けることです。浴室はカビ対策や年末清掃の需要が重なるため、時期によっては10〜15%程度高くなる、または希望日時が取りにくくなることがあります。退去予定が分かっている場合は、早めに見積もりを取ります。
2つ目は、水回りを複数箇所まとめて依頼することです。浴室、キッチン、洗面所、トイレを同時に依頼すると、単発合計より20〜30%程度安くなるプランがあります。移動費や養生作業をまとめられるため、管理会社の空室清掃でも使いやすい方法です。
3つ目は、比較サイトや業者キャンペーンを活用することです。期間限定割引や平日割引により、10〜25%程度安くなる場合があります。4つ目は、軽い汚れを自分で前処理することです。市販のカビ取り剤で落ちる範囲を減らしておくと、特別清掃を避けられることがあります。ただし、強い薬剤を混ぜる、金属部や人工大理石を傷める使い方は避けます。
5つ目は、3社以上の相見積もりです。価格だけでなく、標準範囲、作業時間、損害保険、追加料金の条件を比較します。賃貸の退去精算で借主へ費用を説明する場合、複数見積もりを取っておくと、実勢相場から大きく外れていないことを示しやすくなります。
管理会社向けの実務ポイント
- 浴室の換気扇が正常に動作しているかを定期点検する。換気不良はカビの原因となり、退去時のクリーニングコストが増加する
- コーキングは定期的な打ち替えが必要な消耗部材。入居者の過失がない限り、管理側の負担で対応する
- 退去立会い時は浴室の排水状況も確認します。排水不良は次の入居者からのクレーム原因になりやすい
管理会社は、浴室の換気機能と排水機能を入居中から把握しておくと、退去時の負担判定がしやすくなります。換気扇が弱い、窓がない、浴室乾燥機が故障している物件では、借主の清掃不足だけでカビを説明できない場合があります。設備不良が原因で汚れが拡大したなら、借主負担の請求は慎重に扱うべきです。
退去立会いでは、写真を「浴槽全体」「壁面四面」「床」「天井」「ドア下部」「排水口」「コーキング」「鏡」「換気扇」の単位で残します。借主へ請求する場合は、通常清掃で落ちる汚れなのか、専門処理が必要な汚れなのかを業者見積もりで分けます。コーキングの黒ずみも、表面カビなのか、内部劣化なのかで扱いが変わります。
賃貸浴室クリーニングのよくあるトラブル
退去時に多いのは、浴室クリーニング費用の過大請求です。契約書に退去時清掃費の特約がある場合でも、金額が明記されているか、浴室単体なのか、ハウスクリーニング全体なのかを確認します。特約金額が実勢相場から大きく離れている場合は、内訳の説明を求めます。
経年劣化扱いになりやすいのは、換気扇周辺のカビ、シーリングの変色、長期使用によるコーキングの硬化です。これらは、通常使用でも時間の経過で発生するため、借主の清掃不足だけで全額負担とするのは難しいことがあります。一方で、浴槽の傷、タイル割れ、排水口の詰まり、強い水垢の放置は、借主過失と判断されやすい項目です。
国交省ガイドラインでは、通常損耗や経年変化は貸主負担、借主の故意・過失や通常使用を超える損耗は借主負担という整理です。請求に納得できない場合は、見積書、契約書、入退去時写真をそろえ、消費生活センター188や法テラスに相談します。管理会社側も、請求根拠を写真と見積もりで示せない項目は、説明のつく範囲に整理することが重要です。
出典・参考文献
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」案内ページ: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
- 国土交通省 ガイドライン本文PDF(建物耐用年数準じる設備の整理): https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
- 国土交通省 別表第2(経過年数による負担割合の参考図): https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf
- 民法(e-Gov 第621条 賃借人の原状回復義務): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表(衛生設備・建物本体): https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/hojin/genka/pdf/2100_01-15.pdf
- ダスキン 浴室クリーニング: https://www.duskin.jp/servicemaster/water/sm000090/
- くらしのマーケット お風呂(浴室)クリーニング: https://curama.jp/bath/
- 国民生活センター 賃貸住宅退去時のトラブル相談事例(2021年7月公表): https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210701_1.html